英語とITで切り拓いた、グローバルキャリアへの挑戦

高校時代のテニス留学をきっかけに英語力を磨き、国際的な視野を広げた藤井さん。英語を活かした仕事を求めてIT業界へ転身し、実務を通じて技術力を高めました。外資系企業での経験を経てAWS Japanに入社し、2025年の春にはシンガポールへ赴任。家族と共に新たな環境で挑戦を続ける藤井さんに、これまでの歩みと今後の展望を伺いました。

藤井 博貴さん

異国での挑戦—テニス留学を通しての成長

▲テニス留学

中学時代はテニスに打ち込む毎日を過ごしていました。高校進学を控え、日本の高校を受験しようと考えていましたが、思うようにいかず...。そんな時、両親が雑誌で見つけた「テニス留学」の記事が転機に。もっとテニスを極めたいという想いから、オーストラリアのアデレードに留学を決意しました。時差が少なく治安が良い点も魅力でしたね。

しかし、現地での生活は想像とは異なっていました。四六時中テニス漬けの日々を期待していましたが、実際は現地の高校に通いながらの生活。クラスメイトのほとんどが地元の学生でしたが、当初は英語もほとんど話せませんでした。相手が言っていることは何となく理解できても、自分の考えを伝えるのは難しく、もどかしさを感じる日々。

そんな中、支えになったのがホストファミリーの存在です。彼らは家族のように温かく接してくれました。テニスで帰りがどんなに遅くなってもリビングで待っていてくれ、紙の辞書を片手に拙い英語で話す私の言葉に耳を傾け、理解しようとしてくれました。この温かい環境のおかげで、少しずつ英語にも慣れ、コミュニケーションの壁を乗り越えていくことができました。「伝えたい」という気持ちを大切にし、細かい文法や単語を気にせずに積極的に話せるようになったのは彼らのおかげだと思います。

当時は通信手段が今ほど発達しておらず、日本にいる家族や友人に気軽に連絡を取ることは容易ではありませんでした。プリペイド式の携帯電話を使っていたため、残高が尽きると連絡手段を失ってしまうことも。しかし、ホストファミリーの支えや、テニスを通じて様々な人たちと切磋琢磨した日々のおかげで、不安や寂しさを感じることはほとんどありませんでした。

高校生という多感な時期に親元を離れて海外で暮らした経験は、精神面で大きな成長につながったと感じています。異国の地で困難を乗り越え、強い精神力と主体的に行動する姿勢が身に付きました。

英語を武器に、ITの世界へ

▲メンターと参加したCCIEナイト
▲グローバルチームとのコラボレーションのためにアメリカ出張

高校卒業後は日本へ帰国することに。自分の強みは英語力にあると感じていたため、それを活かせる仕事に就くための勉強をしようと、国際ビジネスの分野へ。実際に学びを進める中では、流通や貿易に対して想像していたものとのギャップを感じることもありましたが、英語を軸にしたいとやってきていたので、ビジネス英語のスキル向上と資格取得には力を注ぎました。

就職活動を経て、羽田空港の国際線コンシェルジュの仕事が決まります。人と接する仕事に興味もありましたし、「英語を活かせる」という部分が魅力的に感じました。こうして空港勤務が始まります。

しかし、入社から半年ほど経つと、違和感を覚え始めます。高度な英語力を求められる場面が少なく、職場もほとんど日本人で、英語力を活かして国際的に活躍したいと思っていた私は「このままでは英語を活かせない」と感じるようになっていました。そのため「転職をしよう」と。

この先、様々な分野を転々とするということは避けたかったため「英語に加え、もう一つ専門分野を身に付けよう」と。そんな時に出会ったのが、英語とITを組み合わせた仕事環境のアレックスソリューションズです。当時はパソコンも持っていない状態でしたが「面白そうだから挑戦してみよう」と思い切って応募し、入社を決めました。

アレックスソリューションズでは、まず大手通信会社に常駐し、専用回線からVPN回線への移行プロジェクトのコーディネーターを担当しました。シンガポールをはじめ世界中のアカウントマネージャーと連携し、ブリッジSEとして現場の調整に奔走する日々。ITの知識はゼロでしたが、英語を使いながら実務を進めることで、着実に経験を積むことができました。

半年が経つ頃には、「技術力もさらに磨きたい」という想いが強くなり、さらなる成長を求めて別の通信会社へ異動します。ここでは監視運用センターでネットワークやサーバーの監視を担当し、2交代制のシフトで働きながら、空き時間には資格取得の勉強にも励みました。

約2年半、アレックスソリューションズで働く中で、プロジェクトの下流工程、上流工程を知ることができ、業界全体の流れを理解することができました。そして「次に転職するなら、プロジェクトに深く関わる元請企業を目指そう」という明確な目標も。というのもプロジェクト深部に行けば行くほど、大変さもそうですが、喜びも大きくなっていくだろうなという印象があったからです。

ステップアップを追い求め—英語とITで築くグローバルキャリア

▲AWS Summit Japanでの登壇
▲2025年3月からのシンガポール移住

次のキャリアステップとして選んだのは、外資系SIerのDimension Data(現NTT Com DD)。バイリンガルの同僚や外国人が多く、グローバルな環境で、エンドユーザー向けのデータセンターやオフィスのネットワーク設計・構築を担当しました。

入社の決め手の一つには、Ciscoの最上位資格「CCIE」の取得支援制度があったことです。高額な受験費用を会社が負担してくれるため、スキルアップを目指す自分にとって理想的な環境でした。3年半の在籍期間で専門知識と英語力の両方を磨くことができました。

次の転職先に選んだのは楽天です。SIerではシステム納品後にプロジェクトが終了しますが「自分で設計・構築したネットワークを継続的に運用したい」という想いから転職を決意しました。楽天では、IDやポイントが複雑に連携するサービスを支えるネットワークインフラを外注せずにすべて自社で設計・構築・運用しています。この、より深くインフラに関わる環境に魅力を感じました。

入社後は、まず2年半にわたりプロジェクトリーダーとして技術面とチーム全体の業務管理を担当。その後2年間はネットワークチームのマネージャー兼ネットワークアーキテクトに就任し、設計と並行してマネジメント業務にも本格的に関わりました。責任の大きな仕事でしたが「楽天のインフラが日本経済を支えている」という誇りを持ちながら働くことができ、技術者として大きく成長できたと実感しています。

現在は2022年からAWS Japanに転職し、ネットワーク専門のITコンサルタントとして新たなキャリアをスタートしました。オンプレミスからクラウドへの移行を検討する企業に対し、専門知識を活かしたアドバイスを行っています。クラウド特有の柔軟性やスケーラビリティを提供し、企業のDX推進を支援できることに大きなやりがいを感じています。特に、ハイスキルで意欲の高い同僚に囲まれた環境は刺激的で、自分自身も常に成長を実感できています。

そして2025年の春から、AWS Singaporeへ異動します。実は結婚当初から「いつか家族と海外で生活したい」という夢を持っていました。子どもには多様な文化に触れてほしいと考えていたため、今回のシンガポール赴任はその夢を叶える大きな一歩です。 もちろん不安や課題もありますが、未知の環境で挑戦し続けることが自分を成長させてくれると信じていますし、家族とともに新たな経験を積み重ねていきたいと考えています。これからも英語とITを軸に、さらなる成長を目指していきます。

海外に行ってみたいと思っている人へアドバイスをお願いします

悩んでいるならば行動を起こした方が良いです。ただ無計画に突き進むのではなく、まずは立ちはだかる壁を書き出してみることが大切です。疑問や不安に対して納得できる答えを見つけるために、積極的に人と話し、意見を聞くだけでなく自分の考えも伝えてみましょう。そうすることで、自分だけの狭い視野に気づき、考えやプランを修正・最適化できるはずです。