日本に心を奪われて。ウズベキスタン出身社員の目が映し出す異国の地の姿

ザセピロワ・アレクサンドラさん

現在はデータベース管理などを担うエンジニアとして活躍するアレクサンドラさん。ウズベキスタン出身の彼女は、来日後ホテル業界に就職しましたが、2019年にIT企業への転職を決意します。アレクサンドラさんの心を魅了し成長を支えるものとは──想いと体験を語ります。

おもてなし精神を学びたい──来日して見つけた新たな目標

茶会inウズベキスタン
▲茶会inウズベキスタン

私が日本に来たのは6~7年くらい前のこと(2020年現在)。故郷であるウズベキスタンの大学を卒業後、ウズベキスタンで仕事をしてから、来日しました。

日本に来た理由は、いつの間にか日本を好きになってしまったからです。
子どものころに『セーラームーン』などのアニメを見ている中で、自然と好きになっていました。

大学では、日本語とはまったく関係ない専攻でしたが、ウズベキスタン・ジャパンセンターという日本文化に触れ合える施設へよく足を運んでいました。ウズベキスタン・ジャパンセンターでは日本語講座が開講されているほか、お茶や盆踊り、着物の着付けなど日本文化に関する講座などなんでもありました。

また、図書室も充実していて、日本の番組まで流れていて……いつの間にか「日本が好き!」という想いが強くなっていました。

特に茶道に触れ続けているうちに、お茶だけでなく、禅語、お花、お香、着物、習字、建築、懐石料理、おもてなしなどの日本の伝統と文化が凝縮されていることに気がつき、それに関してウズベキスタンではできないことやロシア語や英語で手には入れない情報が多かったため、日本に行ってもっと深く習いたいと思いました。

来日後、日本語学校に2年間、専門学校に2年間通い、福岡のホテル業に就職しました。ホテル業界に就職した理由は、「おもてなし精神」にすごく惹かれたからです。

日本のおもてなし精神と出会ったきっかけは、かつて習っていた茶道。
茶道は、細かい気遣いを大切にし、ルールに縛られず、相手がどうしたら笑顔になってくれるかという心構えを重視するのです。この考え方がすてきだと思い、もっと学びたいと考えるようになりました。

ホテル業界はおもてなし精神を学ぶには最適の場所。そう考えた私は、ホテル業界を就職先に選びました。

ウズベキスタンでは、日本の見えないところまで気を配るおもてなしの文化とは違い、道端で仲良くなった方を家にまで呼んでお菓子など出しちゃう温かさと、ウェルカム感のある盛大なおもてなし文化があります。「そこまでしなくていいのに」と感じるたりすることもありますが(笑)。

コンシェルジュがIT業界への転身を決めたワケとは──

ホテルでの元旦の出勤日。お客様の出迎えと新年の挨拶
▲ホテルでの元旦の出勤日。お客様の出迎えと新年の挨拶

前職のホテルでは主にフロントスタッフとして働いていたのですが、お客様やホテルのスタッフは皆さんすてきな方でした。フロント業務だけでなく、お客様をお部屋まで案内したり、レストランで働いたりもしていました。

当時、ある常連のお客様夫婦がとても印象に残っています。
和室もあるホテルだった為、「外国の方にとって、日本人に和室の案内は難しいでは?」と聞かれたことがありました。

茶道の経験が役に立った瞬間でした。
和室ではなぜ縁(へり)を踏んでいけないのかなど和室の説明をしたり、色々な話しているうちに私の日本文化への愛を感じてくださり、「能楽」をやっているこのご夫婦が舞台へ誘って下さいました。大変勉強になったのと、認めて頂けたような気がして嬉しかったです。

お客様と話す時間は、茶道で得た知識とつながって、日本文化への理解がより深まる時間でしたね。新しい知識を得ることが好きな私にとっては、非常に楽しかった記憶があります。

実は、ホテル業務の中で母語であるロシア語を使う機会はほとんどなく、日本語と独学で学んだ英語で対応することがほとんどでした。
私は語学自体が好きで、大学のときは少しフランス語もやっていました。
いろいろな言語を覚え、旅行先で街に出て、現地の人と会話ができるのは、世界が広がって楽しいです。

語学などをコツコツ勉強するのは得意ですが、試験前は嫌になることもあります。ですが、自分自身が成長してできるようになっていく過程が好きなので楽しいです。例えば、音楽を聴いていて、聞き取れる単語が増えて意味や文章がわかるようになると最高に楽しいですね。

こうして1年間ホテル業界で働いた後、IT業界に移ることを決意しました。転職を決めた理由は、もっと自分の幅を広げてみようと思ったからです。
昔からパソコンに触れたり、友人がお店でパソコンの部品販売を担当したり、IT関係の仕事に就いている友人が多かったこともあり、IT業界という異業種に転職することに対してとくに抵抗はありませんでした。

様々な会社を探す中で、現在の会社を見つけました。代表の動画を見て、考え方がすごく気に入ったんです。この人の会社は絶対楽しいし、成長できるだろうと思い応募しました。

多様性を受容する文化が入社の決め手。個性を生かし活躍する日々

会社の仲間と
▲会社の仲間と

応募後の面接で代表と実際に対面したのですが、はじめに感じた印象とまったく変わりませんでした。どんな考えもオープンに受け入れてくれて、会社の中でも社員それぞれのやりたいことを応援してくれるなど、社員の声をちゃんと聞いてくれて、個々人が成長できる環境をつくってくれるんです。

たとえば最近だと、コロナの影響により、オンライン上で資格取得に向けた勉強会や映画観賞会など社員が繋がれるような企画を開催しており、入社前の決め手でもある温かさを感じます。
入社前に2ヶ月の研修があり、ITの経験が全くない人でも学ぶことが出来るからです。参加者の担当現場はそれぞれですが、イベントを通じて仲良くなれるところも魅力的でした。代表や社内の雰囲気を総合的に見て、最終的に入社を決めました。

2020年現在、私の業務内容は、データベースの管理やメンテナンスを行うことです。それぞれ業務内容は多少違いますが、私を含め3名の仲間で顧客先に常駐し、現場での業務を行っています。今はコロナウイルスの影響もあり、在宅と出社を一週間ごとに繰り返しています。

その中で、主にデータベース作業依頼を担当し、開発側からの依頼対応をしています。「このデータが必要」「データを更新してほしい」など、顧客から送られるいろいろなスクリプトを確認し、問題ないかチェック。スクリプトや運用上の問題がある場合は、状況を説明し依頼者に修正対応をして頂いた後作業をします。

当初、IT分野についてまったく何も知らない状態で入社したので、いきなりアレもコレもやってほしいと言われたときは、もうパニック状態でしたね(笑)。OJTでいろいろ教えていただきながら、簡単な業務をこなすうちに慣れてどんどん作業スピードも上がり、今は後輩に教えることもしています。

私の強みは、好奇心の強さだと思います。幼い頃から新しいことを知るのが好きで、よく本を読んだり、おばあちゃんや大人の人の話を聞いたりして、新しい知識を得るのがすごく楽しかったんです。わからないことがあると「どうして」や「なんで」ばかり言っていた子どもだったと思います。

その性格もあって、現場の運用上どうしたらいいかわからない作業がきたらすぐにやり方を先輩に確認しています。

ただ、その中でもやり方を聞いただけで満足せず、例えば他の現場では同じ作業をやってもいいのにこちらの現場ではやっていけない理由を聞いたり、もっと深く勉強したり、調べたりするんです。やり方だけでなくその理由も理解すると、その後も作業がより早く効率よくなると思うんですよね。

また、ド真面目なところも強みだと思います。昔から勉強熱心で、成績も5段階評価ですべて”5”でした。新しいことを勉強して覚えていくのが楽しいんです。ただ、楽しくなければストレスがたまります……私はストレスには良いストレスと悪いストレスの2種類あることを心理学上理解していて、良いストレスを経験しながら成長していくことを楽しんでいます。

笑顔にしたいのは家族。教えることを通じて誰かの頼れる先輩になりたい

どんなことにも興味津々の幼少期
▲どんなことにも興味津々の幼少期

私が笑顔にしたいのはウズベキスタンにいる家族です。小さいころから、好奇心が強いせいか、「この子は将来絶対海外に行きそう」と言われていました。
そうしたこともあって「日本に行きたい」と言ったときも家族が応援してくれました。

姪っ子と小さな甥っ子もいるので、元気そうな顔を見て私も頑張ろうと思います。コロナウイルスの流行が落ち着いたら、会いに行きたいです。家族はあまり日本に興味がないみたいですが、来年、再来年とかに日本にも来てくれればいいなと思います。

将来的には、会社の中で頼れる先輩になりたいです。自分が成長するためだけに頑張るのではなくて、自分が得た知識を他の人に分けてあげて、誰かの役に立つのが一番いいと思います。今は教える側に回ることも多くなってきたのですが、教えるのも自分にとって大きな学びになることを再認識しています。

教える際には、「なんでも聞いてください」という姿勢で接するようにしています。日本には、わからないことがあっても、聞くのがはばかられる、勇気がいるという人がけっこういると思います。ですが、怖がらずになんでも聞いてほしいという想いがあります。相手にとって勉強になりますし、万が一インシデントになることも防げるかもしれません。

今後、世界中旅をしていろいろ見てみたいですが、拠点は日本にしたいですね。やっぱり、私は日本に心を奪われてしまったので。